モチツツジ | 雪車(ユキグルマ)
2022年05月26日

開花期:4月下旬
モチツツジの白花采咲き品種で、古典園芸品種。
花車と同じで少なくとも江戸時代から栽培されていたと思われるが、
途中途絶えていたものを栃木県益子町で発見され再度日本全国に普及した。
本種に限らず一度途絶えたものが専門化や園芸家の探索により再発見、再流通されるパターンは案外とある。
偉大な先達らのおかげで今現代にも様々なツツジが集っている。

他のモチツツジ系の采咲き品種と比べると花弁の幅がやや広く、存在感が強い。
裂けて分かりにくいがよく観察すると黄緑色の蜜標が本当にうっすらとだが残っている。
他に采咲きのモチツツジ系だと花色がピンクの花車、淡いピンクの風車、赤紫色の花火が残存。
赤紫の花を咲かせ非常に細い葉を持つ青海波も存在するが、滅多に流通しない。
取り扱いについて |

性質はモチツツジそのままで強健。
程々の日向を好み、乾燥にもそこそこ強い。
乾燥に強いといってもあくまでツツジ基準での強さなので水切れには注意する。
平戸ツツジのような耐暑性もないので、明るい半日陰に植えるのが理想的。
特に西日が長時間当たるような場所に植えると真夏に葉焼けを起こし、
生育不良からの開花減に繋がることもあるので注意。

萌芽力は強く、刈り込みにもよく耐える。
モチツツジ系は放置すれば樹高が2m程度まで伸びるので、好みによって都度剪定を行う。
本種は平戸ツツジ程ではないが新芽がよく伸びるので、
樹高を抑えたければ伸び過ぎて手遅れになる前に枝を落とす。
若い株はそれ程でもないが、ある程度育つと新枝の成長が急加速する。
雑記 |

江戸時代の文献に出てくる古典品種などは歴史の過渡期に途絶えたものも多い。
と、同時に近年の各園芸家の努力や探索、協力者の助力などで再び発見され、
再度園芸品種として蘇った古典品種も存在する。
古民家の庭、植物園、個人所有、自然に飲まれかけた廃屋など見つかる場所は多種多様。

今当たり前に私たちが手にする苗も、そうした苦難を乗り越えてやってきた奇跡の苗だ。
可能な限りまた次へと伝えていきたいものである。
しかし江戸時代の愛好家達もまさか本種が途中途絶える日が来るとは全く考えていなかったのではないか。