タンナゲンカイツツジ | 耽羅玄海ツツジ

2023年08月26日
ツツジ
タンナゲンカイツツジの花

分類・ゲンカイツツジ/有鱗片シャクナゲ(落葉樹)
開花期:3月上旬
かなり早咲きで基本種のゲンカイツツジよりも僅かに早く咲く。

扱いやすさ・★★☆☆☆ 若干難しい
基本種のゲンカイツツジが有鱗片シャクナゲの中でも強健で扱いやすいのに比べると、
本種は矮性品種である故に葉が詰まり蒸れやすく高温多湿に弱い傾向があって若干扱いにくい。
特に苗木が小さい頃ほど真夏に蒸れ、水切れを起こしやすいので注意する。
なるべく乾いていない、西日のあまり当たらない場所に植えると良い。

暑さ・普通。日差しには強いが高温多湿に弱いので真夏の直射日光はなるべく避ける。
寒さ・強い。東京では気にする必要がない。
乾湿・やや乾燥に弱く、若干の湿気を好む。


概要


ゲンカイツツジの変種、もしくは近縁種。
朝鮮半島の南西に位置する済州島が原産で、その済州島に古代から14世紀ほどまで存在した
耽羅王国(たんら、たんな)が本種の名前の由来である。

ゲンカイツツジの矮性種というよりは、朝鮮に多く自生するカラムラサキツツジの矮性種という
表現の方が正しいかもしれない。(ゲンカイツツジはカラムラサキツツジの亜種に当たる)

基本種のゲンカイツツジとの違いは成長速度と最終的な樹高で、
本種は矮性種であり生育はかなり緩やかであまり大きくはならない。


タンナゲンカイツツジの花

基本種と同じで花弁が薄く、日光が当たると非常に透き通った輝きを見せる。
矮性であることから花は大体真上を向き、花弁も外側によく広がるので基本種とは大分受ける印象が違う。

特に苗木の頃は常緑ツツジのような花の付け方をするので、
ゲンカイツツジのミニチュアといった感じで大変可愛らしい。
食べてしまいたくなる。


取り扱いについて


特性

上述したが基本種と比べるとかなり矮性で、成長も遅く大きくならない。
常緑ツツジの苗木のような感じになるが、その矮性故に基本種よりも蒸れやすく
大分扱いにくくなってしまっている。

日差しへの耐性自体は持っており、蒸れさえしなければ
ある程度連続した真夏の西日にも耐えはする。

尚、何故かは分からないがゲンカイツツジに付きやすいゾウムシが本種にはあまり付かない。


剪定

萌芽力が低く、刈り込みには向かない。

矮性で成長速度は非常に遅く、手に入る苗も非常に小さいものが多い。
樹高を抑える意味での剪定を本種に施す日が来ればそれはとても素晴らしいことだろう。

蒸れやすいので透かしてやりたい気もするが、成長の展開と樹勢を考えるとあまり触りたくはない。
ある程度背が伸びたら本当に若干中を透いてやるという程度になるだろう。


雑記


絵1

矮性品種というのは読んで字の如く大きくならない品種のことを言う。
この大きくならないというのは基本種と比較しての事象であって、例えばゲンカイツツジの最大樹高は
2~3m程だが本種は本当に最大限時間をかけて2mに届くかどうかだ。

こう書くとそんなに変わらないと思われるかもしれないが、大抵は成長速度に雲泥の差がある。
偏に矮性品種が扱いやすいとされるのは成長速度も基本種に比べて緩やかなものが多いからだ。


絵2

高山に特化したり、火山に特化したり、何れも苛酷な環境に適応して矮性を獲得したものが多い。
こうした場所では風や雪、立地などで背がない方が他の植物との生存競争で有利に働いたようである。

その長年の涙ぐましい努力の果てにいつの間にか人間に勝手に園芸植物と認定され、
下山してこんな東京の端まで勢力を広げたと考えると中々に軌跡を感じるものだ。

恐らく植物の増えたい広がりたいという欲を鑑みればそんなに悪くは思っていないだろう。
彼らは100m横に広がりたいが故に100万年をかけて自己進化する生き物である。